扇子づくりに欠かせない素材のひとつである和紙。なかでも黒谷和紙は京都・綾部の自然と伝統の手漉き技術によって作られる高級和紙として知られています。その滑らかな質感と耐久性により、古くからさまざまな用途で重宝されてきました。今回はそんな黒谷和紙についてご紹介します。


黒谷和紙とは

黒谷和紙は、京都府綾部市黒谷町・八代町と、その周辺地域で作られた純粋手漉き和紙です。良質な楮(こうぞ)を原料に、ほとんどの工程が職人の手作業で行われるため、丈夫で長期保存に適した作りとなっています。1983年には京都府指定無形文化財に認定され、その品質の高さから、二条城の障子や萬壽院のふすまなど、文化財にも使用されています。 また、黒谷地域は京の都に近いことから、京呉服の値札や物を包む時に使用するたとう紙など、京都の伝統産業を支える役割も果たしてきました。現在も手漉きの技法を受け継ぎ、希少な和紙を生産しています。


800年以上の歴史

黒谷和紙の歴史は800年以上前、平家の落武者がこの地に移り住み、生活の糧として紙漉きを始めたことに端を発したとされています。山々に囲まれた黒谷の地は農業には不向きでしたが、清流・黒谷川が流れる自然環境は紙作りに適していました。 黒谷和紙は和紙の中でも特に丈夫で、提灯や和傘、障子など、日常の道具に欠かせない存在として重宝されてきた歴史があります。現在も、障子や白竹堂の扇子など、様々な分野で使われています。


日常に広がる黒谷和紙

黒谷和紙は、昔から障子紙や和傘など日々の生活に欠かせない品として使われてきました。今ではその耐久性を活かして、さまざまな形で暮らしの中に取り入れられています。たとえば、紙の質感を生かした名刺入れや、座布団、絹糸を組み合わせたストールなどがつくられています。手漉きならではの風合いを大切にしながら、日常使いしやすい新しい使い方がされており、活用の幅が広がっています。


黒谷和紙を使用した扇子のご紹介

白竹堂ではさまざまな黒谷和和紙を使用した扇子を取り揃えています。いずれも趣のある品ですので、扇子選びの際に役立ててみてください。


短地黒谷和紙(たんちくろたにわし)

2色の和紙を職人が一枚一枚手切りで貼り合わせたシンプルながらも上品な京扇子です。繊細に重ねた和紙が光をやわらかく透かし、涼やかな趣を添えます。


脇彩黒谷和紙(わきいろくろたにわし)

扇子を閉じた際に模様が浮かび上がる脇彩(わきいろ)シリーズ。一本一本、模様の出方が異なる上品な花のシルエットが、黒谷和紙の風合いにアクセントを加えます。


脇漆黒谷和紙(わきうるしくろたにわし)

紙の折山に漆を施す、脇漆(わきうるし)という技法を使用した京扇子です。扇子を閉じた際に扇面の黒谷和紙に加えられた上品なツヤをお楽しみいただけます。


まとめ

白竹堂の扇子に使用している京都の黒谷和紙についてご紹介しました。800年以上前から黒谷地域の人々によって受け継がれてきた伝統的な黒谷和紙は、古くから京都の産業に深く関わりながら、現在も生活の身近に根差した品として活用されています。白竹堂では、黒谷和紙を使用した扇子を取り揃えています。どれも職人の手仕事が感じられる趣のある品ですので、ぜひお手に取ってみてくださいね。